波の青、舟の黄色、空の淡い色。浮世絵の多色木版画は、こうした色を一度に紙へ移すわけではありません。色ごとに用意した版木を使い、同じ紙へ摺り重ねて仕上げます。では、そのたびに紙の位置をどうそろえるのでしょう。

The Great Wave — JP1847 · Katsushika Hokusai / The Metropolitan Museum of Art, H. O. Havemeyer Collection, Bequest of Mrs. H. O. Havemeyer, 1929 · Public Domain。1600×1076へ縮小・WebP変換。トリミング・色調整なし。
手がかりは、版木に付けた「見当(けんとう)」という目印です。伝統技法を継承するアダチ版画研究所は、北斎の「神奈川沖浪裏」を復刻する制作工程で、2つの見当の位置に合わせて和紙を置く様子を紹介しています。
版木へ絵具を広げ、紙を合わせたら、「馬連(ばれん)」という道具で紙をこすって色を移します。1色を摺り終えたら紙を外して仕上がりを確認し、次の色を重ねます。版を替えても、紙を置く基準があることで、輪郭と色を正確に合わせられるのです。
細い線や鮮やかな色の背後には、版を彫る仕事と、紙へ摺る仕事があります。色を重ねるたびに位置を合わせるという工程を知ると、一枚の絵の輪郭にも、職人が繰り返した手の動きが見えてきます。

