秋分のころ、昼と夜はほぼ同じ長さになります。それでも、日の出と日の入りの時刻を引き算すると、ちょうど12時間にはなりません。暦が示す太陽の位置、地平線での見え方、空に残る明るさ。それぞれの基準を分けると、数分のずれの理由が見えてきます。

秋分は、何を基準に決まる?

秋分は、各地の昼の長さを測って決めるものではありません。地球から見た太陽が、天球上の決まった位置に来る瞬間です。天球とは、空の方向を表すために考える大きな球のこと。国立天文台の説明では、秋分は太陽の「視黄経」が180度になる瞬間として定められています。秋分の定義

視黄経は、空で太陽が一年をかけて進む道に沿って、その位置を角度で表すものです。春分を基準の0度とし、その半周先が秋分の180度。日本の暦では、その瞬間が中央標準時で何日に当たるかを扱います。一つの瞬間を決めることと、ある場所で日の出から日の入りまでの時間を測ることは、問いが違うのです。

季節の巡りは、365日という整数の日数にぴったり収まりません。そのため秋分の時刻は年ごとに動き、うるう年を入れる暦との関係で日付も変わります。この日付の問題は、うるう年と暦の仕組みへつながります。ここでは、一日の中で昼の長さがずれる理由に注目しましょう。

太陽の中心で区切ると、何が違う?

日の出や日の入りでは、空を横切る太陽を点として扱うわけにはいきません。太陽には円盤としての大きさがあり、上端、中心、下端が地平線を通る時刻は違います。日の出・日の入りの基準は、どちらも上端です。日の出入りの定義

グランドケイマンの海。水平線の上に太陽と雲があり、手前に小舟が浮かぶ
2018年3月31日、グランドケイマンで撮影。太陽はまだ水平線より上にあります。日の入りの基準になるのは、太陽の上端が水平線に達して見えなくなる瞬間です。秋分当日や屈折の測定を写した写真ではありません。
Sunset over ocean.jpg · 写真:Smnelson4 · CC BY-SA 4.0。4032×3024から1400×1050へ縮小・WebP変換。トリミング・色調整なし。加工後もCC BY-SA 4.0で提供。

朝は円盤の上端が現れたところから昼が始まります。中心が地平線まで上がるのを待ちません。夕方は中心が沈んでも、上半分が残っているあいだは昼が続きます。上端が最後に消えたところで、日の入りになります。

基準夕方
中心半分現れる半分沈む
上端現れ始める沈みきる

この表は、同じ地平線を太陽のどの部分が通るかを比べたものです。中心で区切る場合に比べ、上端で区切ると朝と夕方の両方で昼が延びます。ただし、大気のある地球では、基準を中心に変えるだけで屈折の影響まで消えるわけではありません。

地平線の下の光は、なぜ届く?

光が大気の中を進むと、空気の状態に応じて進む方向が曲がります。これが屈折です。地平線付近から届く太陽光は、大気を通る途中で曲がり、太陽が実際よりも高い方向にあるように見えます。大気がなければ隠れている位置の太陽が、まだ見えることになります。NOAAの解説

この効果で、朝には太陽がより早く姿を現し、夕方にはより遅くまで姿を残します。先ほどの「上端を基準にする」という決め方に、光の通り道の変化が重なっているのです。

国立天文台の計算例を見てみましょう。2013年9月23日の東京では、日の出5時29分、日の入り17時37分で、差は12時間8分。24時間からそれを引いた残りは11時間52分です。昼は12時間より8分長く、残りの時間とは16分の差があります。この二つの「差」を混同しないことが大切です。

これは特定の年と場所の例です。全国どこでも毎年8分長くなるという値ではありません。同じ角度のずれでも、太陽が地平線に対してどれほど斜めに進むかで、時刻への効き方が変わります。暦の数値を比べるときは、地点と年をそろえる必要があります。

屈折の大きさは、毎日同じ?

平均的な大気を仮定すれば、日の出・日の入りを計算できます。しかし、実際の空気の温度などは日によって変わります。どれだけの幅があるかを調べたのが、Bradley E. SchaeferとWilliam Lillerによる1990年の研究です。原著論文

著者らは、海の向こうで天体が消える時刻、六分儀という角度を測る器具での観測、高さごとの気温から求める計算を組み合わせました。消えた時刻に天体が本来どの方向にあるかを計算し、見えた方向との差から屈折を求める、という考え方です。観測者の高さによる地平線の見え方も補正しています。

論文は7つの地点群から144件をまとめ、屈折の角度が0.234〜1.678度の範囲にあったと報告しています。144件すべてが同じ方法で測った日の入りではなく、気温の鉛直分布から計算した値なども含みます。平均値が標準的な値に近くても、一回ごとの見え方には幅があることを示す研究です。

この範囲を、そのまま日本のどの海岸にも当てはめることはできません。研究の地域や測定方法は限られています。現在の米海軍天文台の解説も、大気の状態によって、見通しのよい海上でも予測時刻が1分以上ずれる場合があるとしています。さらに山や観測者の高さも影響します。天体の位置を精密に計算できることと、目の前で見えなくなる時刻をぴったり当てることは別なのです。計算精度の説明

日の入りと同時に、夜の暗さになる?

太陽の円盤が見えなくなっても、空はすぐには暗くなりません。大気の上のほうにはまだ太陽光が届き、その光が散らばって地上を照らすからです。日の出前や日の入り後の、この明るさが残る時間を「薄明」と呼びます。薄明の説明

川と木道の向こうに、太陽の円盤が見えない夕空の明るい帯が広がる
2014年5月27日、米国ミシガン州の川沿いで撮影された夕景。太陽の円盤が見えなくても、空の明るさを眺められます。写真だけで日の入りからの経過時間や薄明の段階は判定できません。
Gfp-michigan-sunset-over-the-river-boardwalk.jpg · 写真:Yinan Chen / Good Free Photos · Public Domain。3403×2249から1400×925へ縮小・WebP変換。BREWによるトリミング・色調整なし。

写真では、太陽の円盤が見えない方向にも、明るい空の帯が広がっています。ただし、写真の明るさは露出や画像処理にも左右されます。見た目だけで「日没から何分後」と決めたり、薄明の段階を測った資料として扱ったりはできません。

薄明を計算するときにも、基準を設けます。米海軍天文台の定義では、太陽の中心が地平線の下6度に来るところが市民薄明の暗い側の境界です。航海薄明は12度、天文薄明は18度。夕方には、この順に深い段階へ進みます。ただし、実際にどれほど明るいかは雲や大気の状態にも左右されます。薄明の区分

日の出から日の入りまでを知りたいのか、照明なしで見渡せる時間を知りたいのか。測りたいものによって、一日の境目は変わります。秋分の日の「ほぼ半分ずつ」という理解に、太陽の上端、大気の屈折、薄明という三つの視点を足すと、夕方の空をもう少し細かく読み取れます。