シャボン玉が丸くなるのは、表面張力が膜の面積を小さくする方向に働くからです。同じ体積の空気を包むなら、球が最も小さな表面積で済みます。

でも、それなら泡は、なぜ際限なく縮まないのでしょう。大きなシャボン玉が細長く伸びるのは、法則に反しているのでしょうか。形を決める力から、膜を保つ材料の実験へと、順に見ていきます。

なぜ、四角より丸いほうがよい?

シャボン玉の中身の大部分は空気で、それを包むのは薄い液体の膜です。液体の表面には、面積が小さくなる方向に働く性質があります。これが表面張力です。Exploratoriumの解説は、同じ体積を囲む形を比べると、球の表面積が最小になることを説明しています。

たとえば、体積が1立方センチメートルの立方体なら、一辺は1センチメートル。六つの面を足すと、表面積は6平方センチメートルです。同じ体積の球は、半径が約0.62センチメートルで、表面積は約4.84平方センチメートルになります。

これは球の体積「4πr³÷3」と表面積「4πr²」から求めた比較です。球の表面積は立方体より約19%小さく、同じ中身を、より少ない面積で包めます。「丸いから丈夫そう」という印象とは別に、面積を比べて説明できるわけです。

建物の前に浮かぶ、丸みを帯びたシャボン玉
空中のシャボン玉。輪郭は丸みを帯びていますが、写真の泡も完全な円ではありません。理想的な球と、実際に動く泡を分けて考える手がかりになります。
Soap bubble in the air · Alina Vozna / Wikimedia Commons · CC BY-SA 4.0。1400×927へ縮小・WebP変換。トリミング・色調整なし。同じライセンスで提供。

ここでは、周囲から大きく変形させられず、膜の表面張力を一様とみなせる、閉じた泡を考えています。写真の泡が少し縦長に見えることも、こうした条件を考える入口になります。

縮もうとするのに、なぜ泡はつぶれない?

膜は面積を減らそうとしますが、内側の空気は膜を外へ押します。形が落ち着いた球形の泡では、内側と外側の圧力の差が、表面張力による力と釣り合っています。

OpenStaxの教科書に示される関係は、内外の圧力差=4×表面張力÷半径です。シャボン膜は内側と外側の二つの表面を持つため、表面が一つの液滴とは係数が異なります。半径に比べて膜が十分薄い場合の式です。

同じ表面張力なら、半径が半分の泡では圧力差が2倍になります。例として表面張力を0.037ニュートン毎メートルと置くと、計算は次のようになります。

半径(cm)圧力差(Pa)
114.8
27.4

cmはセンチメートル、Paは圧力の単位パスカルです。表面張力の値は教科書の石けん水の代表値を使っています。液の配合や条件が違えば変わるため、あらゆるシャボン玉の実測値ではありません。ここで比べているのは、空気の総量でも内側の圧力そのものでもなく、外側よりどれだけ圧力が高いかです。

二つの泡がくっつくと、境目はどうなる?

二つの泡が接して膜を共有すると、それぞれが完全な球のままでいるとは限りません。同じ大きさで、表面張力も同じ泡が落ち着いているなら、内圧が等しいので共有する膜は平らになります。

大きさが違うと、小さい泡のほうが内圧は高くなります。そのため、境目の膜は大きい泡の側へ膨らみます。Exploratoriumの接触する泡の解説では、この平らな境目と曲がった境目を比較できます。

面積を小さくする働きが消えたのではありません。隣の泡とも膜を分け合うため、「一つの泡だけで空気を包む」ときとは条件が変わります。泡の輪郭を見るときは、隣に何が触れているかにも目を向けると、形の違いが読みやすくなります。

大きな泡が細長く伸びるのは、なぜ?

二本の棒とひもで広げられ、くびれた形に伸びているシャボン膜
道具につながったまま伸びるシャボン膜。閉じた球だけを考える場合とは、膜を支える条件が違います。この写真は実演の記録で、以下に紹介する論文の実験写真ではありません。
The soap bubble tends to spherical shape · Alina Vozna / Wikimedia Commons · CC BY-SA 4.0。1400×927へ縮小・WebP変換。トリミング・色調整なし。同じライセンスで提供。

写真では、棒とひもにつながった膜が、大きく伸びています。輪郭をたどると、上の丸みと下のくびれが見えます。最初の写真と違い、まだ道具から切り離された一つの球を見ているわけではありません。

表面積の比較は、囲む体積をそろえたときに、どの形が最も少ない面積で済むかという話でした。膜を支えたり広げたりしている途中の形まで、すべて球になるという意味ではありません。「膜が動いている途中か」「道具や別の泡に触れているか」を確かめる必要があります。

また、この一枚だけから、風の速さや液の成分、形が変わる時間は分かりません。写真は形の違いを見つける材料になり、その違いを確かめるには、条件をそろえた観察や実験が必要になります。

大きな泡には、粘り気の強い液がよい?

巨大な泡をつくるには、膜を大きく広げる過程にも注目する必要があります。Frazierらの2020年の実験研究は、石けん液にグアーガムやポリエチレンオキシドという高分子を加え、液の性質を比較しました。高分子は、長い鎖のような分子です。

研究では、落下する液滴につながる液の糸が、切れるまでどれだけ伸びるかを調べました。加えて、10×15センチメートルの垂直な膜をつくり、赤外線を使って厚さの変化を測り、破れるまでの時間を記録しています。

高分子を加えると、液の糸が長く伸びる性質が現れました。一方、膜の寿命は濃度を上げれば際限なく延びるわけではなく、高い濃度で短くなる場合もありました。初めの膜厚も、添加だけで大幅に増えたわけではありません。著者らは、大きな膜の形成には、単純な粘り気だけでなく、引き伸ばされたときの液の応答が重要だと論じています。著者公開版の第III〜IV節で、測り方と結果を読めます。

ただし、この寿命の測定対象は枠に張った膜です。屋外を漂う巨大な泡が、同じ時間だけ持つことを示した実験ではありません。

丸い形を説明する表面張力から出発すると、内外の圧力、隣の泡、膜の伸び方へと問いが広がります。次にシャボン玉を見るときは、丸くなったあとだけでなく、道具から離れる前の膜にも注目してみてください。