雲は空にとどまり、雨は地面へ落ちてきます。どちらも水を含むのに、違いはどこから生まれるのでしょう。水の状態、粒の大きさ、空気の流れを分けて考えると、雲から雨へ変わる途中が見えてきます。
白い雲は、水蒸気そのもの?
水蒸気は、水が気体になったもので、目には見えません。白く見える雲は、小さな水滴や氷の粒が集まったものです。まず「空気中に気体としてある水」と「粒になっている水」を分けることが、雲を理解する出発点になります。気象庁の教材
空気が上昇すると、周りの気圧が下がるため膨張し、温度が下がります。十分に冷えると、水蒸気の一部が水滴になる「凝結」が起こります。雲ができる過程では、ちりや塩の粒など、水滴ができる足場になる微粒子も働きます。こうした粒を「凝結核」と呼びます。UCARの解説
上昇のきっかけは、地面で暖められた空気だけではありません。山に沿って風が押し上げられたり、前線で暖かい空気が持ち上がったりすることもあります。空に水を運ぶ過程と、水滴として見えるようになる過程は、つながっていますが同じことではないのです。

S’COOL: Cumulus Clouds — Cumulus over the Rocky Mountains · 写真:NASA / Jeff Caplan · NASA Media Usage Guidelines。WebP変換のみ。原画像の構図・上端の表記を維持。
雲の粒も、下へ落ちている?
水滴には重力が働きます。ただし、空気の中で落ちるときには、動きを妨げる抵抗も受けます。とても小さな雲粒は、静かな空気の中をゆっくり落下します。雲の粒が小さいことは「重力がなくなる」ことではありません。NWSの雲の解説
もう一つ必要なのが、空気自体の動きです。上向きの風が粒を運べば、空気に対しては落ちていても、地面から見ると上がる場合があります。「空気に対してどちらへ動くか」と「地面からどう見えるか」を分けると、落下する粒が雲の高さに残れる理由を考えやすくなります。気象庁の説明
雲全体を、水で満たされた袋のように考える必要もありません。気象庁は積雲の例で、上昇流が湿った空気を取り込み、新しい水滴ができる一方、乾いた空気が入ると水滴が蒸発する過程を説明しています。雲の形は、同じ粒がずっと止まって作っているとは限りません。積雲の成長と消散
雲粒と雨粒は、どのくらい違う?
NWSの掲載教材では、雲粒の直径を約0.02 mm、典型的な雨粒を約2 mmとして比べています。どちらも例であり、すべての粒が同じ大きさという意味ではありません。直径では100倍ですが、水の量の差はもっと大きくなります。
| 比較 | 雲粒 | 雨粒 |
|---|---|---|
| 直径(mm) | 0.02 | 2 |
| 直径の比 | 1 | 100 |
| 体積の比(球) | 1 | 100万 |
球の体積は、直径の3乗に比例します。100×100×100で100万倍。つまりこの比較では、雨粒1個に、雲粒約100万個分の水が入ります。これは水の量の換算で、実際に100万回の衝突を数えたということではありません。
大きさだけで、地上へ届くかどうかを一律に決めることもできません。上昇気流の強さや、落下する先の空気の乾き方も関わります。表は雲粒と雨粒の隔たりをつかむ目安として読んでください。
小さな粒は、どうやって雨まで育つ?
水蒸気が水滴へ取り込まれると、水滴は育ちます。しかし、小さな粒ができることと、雨粒まで成長することの間には、大きな隔たりがあります。氷を含まない暖かい雲では、粒どうしの衝突と合体が重要な過程になります。
大きさの違う粒は、落ちる速さも違います。大きな粒が小さな粒に追いつき、衝突して一つにまとまれば、水の量が増えます。ただし、ぶつかった粒が必ず合体するわけではありません。どれくらいの大きさの粒が、どのくらい混ざっているかが、雨への成長を考える手がかりになります。降水教材の衝突・合体過程
冷たい雲では、氷の粒が育つ過程も加わります。氷晶が落下し、途中の暖かい層で融けて雨になる場合もあります。「雨はすべて、液体の雲粒どうしがくっついたもの」と一つにまとめず、雲の温度や水の状態も見なければなりません。
実験室の雲では、何を調べている?
粒の大きさのばらつきに注目したのが、Chandrakarらの2016年の研究です。実験では、雲を作る容器の下面を26℃、上面を7℃に保ち、湿った空気の対流を起こしました。そこへ、水滴の核になる微粒子を供給し、供給量による違いを調べています。実験論文
公開要旨と確認できた実験方法によると、微粒子の濃度を低くすると、水滴の平均直径が大きくなるだけでなく、大きさのばらつきも広がりました。著者らは、水滴の成長を左右する水蒸気の過飽和、つまり同じ温度での飽和の目安を水蒸気の量が上回る度合いの揺らぎと結びつけて説明しています。
この研究の面白さは、平均の大きさだけで雲を表そうとしない点です。一方で、温度差などを外から一定に保つ容器内の実験であり、自然の雲が雨を降らせるまでの全過程を再現したわけではありません。ここでは公開要旨と取得できた実験方法の範囲を紹介し、屋外の雨量や降り始める時刻まで予測できるとは扱いません。
雲から落ちた粒は、必ず地面に届く?
粒が雲を離れても、地面へ届くとは限りません。下の空気が乾いていると、落ちる途中で蒸発してしまう場合があります。雲の下へ筋のように伸びながら、地表へ届く前に消える降水は「尾流雲」、英語ではvirgaと呼ばれます。尾流雲の解説

Virga - NOAA.jpg(Historic NWS Collection, wea00057) · 写真:Grant W. Goodge / NOAA(Wikimedia Commons経由) · Public Domain。1208×1864から1037×1600へ縮小・WebP変換。トリミング・色調整なし。
写真では、雲の下に薄い尾が伸びています。ただし、写真一枚から、その粒が液体なのか氷なのか、どれほどの速さで落ちているかまではわかりません。雲の形を眺めることと、粒や空気の動きを測ることは、異なる観察です。
雲を見るときには、粒ができること、成長すること、空気に運ばれること、途中で消えることを分けてみる。空に残る雲と落ちる雨の間には、こうした過程が重なっています。

