昔のピアノには、今と白黒が逆の鍵盤を持つものがありました。手前に長く伸びる鍵盤が黒く、その間で一段高くなった短い鍵盤が白いのです。ヤマハの解説は、18世紀にはオルガンやチェンバロにも、この配色が多かったと紹介しています。

実物も残っています。メトロポリタン美術館所蔵のピアノは、シュタイン兄妹の工房が1794〜1802年に製作したもの。現在の白鍵に当たる部分の手前側には、黒檀という木材が、黒鍵に当たる部分の上面には骨が使われています。色の違いを、材料からも確かめられる一台です。

装飾のある古いグランドピアノ。手前の長い鍵盤が黒く、奥の短い鍵盤が白い
シュタイン兄妹の工房が1794〜1802年に製作したピアノ(作品番号64.252)。手前の黒い鍵盤と奥の白い鍵盤に注目。モーツァルト本人が使った楽器ではありません。
Pianoforte, Stein, Frere et Soeur · 画像・所蔵:The Metropolitan Museum of Art/Gift of Mrs. Esme O’Brien Hammond, 1964 · Public Domain。WebP変換。トリミング・拡大・色調整なし。

では、なぜ今の配色になったのでしょう。ヤマハは19世紀に白黒が入れ替わったと説明する一方、理由はよくわかっていないとしています。見た目の安定感や、明るい鍵盤を好む傾向などが挙げられますが、いずれも確定した理由ではありません。

古いピアノを見るときは、鍵盤の色だけでなく、手前と奥の形にも目を向けてみてください。見慣れた白黒の組み合わせも、楽器の歴史の中で変わってきたことがわかります。