地図の上は北、と決まっているわけではありません。英国のヘレフォード大聖堂に残る、1300年ごろの世界地図「ヘレフォード図」は、東を上に描いています。中心にあるのは聖地エルサレム。ブリテン諸島は左下に見つかります。
大聖堂の公式解説によると、日の昇る東は、中世のキリスト教徒がキリストの再来を待ち望んだ方角でした。この地図には、当時のキリスト教世界のものの見方が織り込まれているのです。

Hereford Mappa Mundi 1300.jpg · 所蔵:ヘレフォード大聖堂/画像:Wikimedia Commons · Public Domain。WebP変換。トリミング・拡大・色調整なし。
図の各部分を読む解説では、世界の東の端、つまり上部に円い島としてエデンの園が描かれているとわかります。中央のエルサレムは、塔や門を備えた円形の城壁で囲まれています。土地の配置と聖書の物語が、一枚の図の中で結びついています。
ヘレフォード図が伝えるのは、場所の位置だけではありません。公式解説は、当時の人々が理解した人類の歴史や行く末も示す図だと説明しています。どの方角を上にし、何を真ん中に置くか。その配置にも、この地図が伝えようとした世界の姿が表れています。